このたびShinQs Gallery 5では、井上樹里による個展「視線のリトリート」を開催いたします。
井上樹里は、空を中心とした心象風景を通して、日常に潜む記憶や温もりをすくい取るように絵画制作を行ってきました。海外での体験を背景に、余白や不完全さを含んだ静かな画面は、観る者それぞれの内側にある感覚を呼び起こします。描かれる風景は特定の場所を示すものではなく、記憶や感情の断片が重なり合うことで立ち現れる、個人的でありながらどこか普遍性を帯びた世界です。
本展タイトルにある「リトリート」とは、日常から一歩距離を取り、心身を整える時間や空間を意味します。井上の作品に広がる風景は、喧騒から離れた静けさの中で、自身の内側と向き合うための装置のように機能します。曖昧で開かれた画面は、鑑賞者の記憶や感覚と緩やかに呼応し、それぞれの中に異なる「回復の風景」を立ち上げます。
また、にじみや重なり、わずかな揺らぎといった絵画的要素は、人の手による不完全さや余白を積極的に残しながら構成されています。それらは明確な形や意味に回収されることなく、見る行為そのものに静かな広がりを与え、時間の流れや感覚の移ろいを内包しています。
本展では、新作および近年の作品を通して、井上樹里が描き出す静謐な風景をご紹介いたします。日常の速度から少し離れ、作品と向き合う時間が、それぞれの感覚をそっと整える契機となれば幸いです。
井上樹里 Julie Inoue
東京都出身。
多摩美術大学大学院油画領域修了。
空を中心とした心象風景や、
日常に潜む記憶や温もりを主題に絵画制作を行う。
海外での体験を背景に、
余白や不完全さを含んだ絵画空間を通して、
静かで個人的な感覚を呼び起こす表現を展開している。
Julie Inoue
Born in Tokyo.
Completed her MFA in Oil Painting at Tama Art University.
Her work focuses on emotional landscapes centered on the sky,
as well as intimate memories and quiet moments from everyday life.
Drawing on her experiences abroad,
she creates paintings that evoke a personal and contemplative atmosphere
through subtle compositions and a sense of openness.







